小田原戦記・第一部「蟻との戦い」

以前にも書いたが、小田原の国府津という所に住んでいた。


その家というのが、築年数不明の、大家さんが趣味で建てたという謎の住宅で、六畳ほどの部屋と台所という作りだった。


隣近所への配慮などほとんど考えずに音楽を聴いたり楽器の練習をできるのは非常に良かったのであるが、困らされたことも色々あった。


簡単に書くと、虫、湿気、あと家の前に繁っている芝生に犬のフンが絶えず、フン害に憤慨、てなもんで、まあ今となっては良い思い出といった感じであるけれども。


その中でも一番キツかったのは「アリ」であった。

アリ、ご存知の通り、道端で行列なんかを作っている、あの小さい虫であるが、ある時、異様に部屋の中にアリを見かけるな、と思ったのである。

気になって観察していたら、どうやら家の中に巣を作っているらしいことが判明した。

すごく小さい赤茶けたアリで、ネットで調べた所、「イエヒメアリ」という家に住み付きやすい種類とのことであった。


その日からアリとの戦いの日々が始まった。

市販の毒餌なども試してみたが効果はなく、落ちている食べ物のカス、食べ終わったスナック菓子の袋などに気づいたら行列を作っており、慌てて処分するのだが、そのうち家の中の至る所で見かけるようになり、その小さい体も相まって様々な場所に入り込み、まさしく、イエヒメアリに聖域無し、という感じ。


ついに台所に置いていた砂糖の容器の中にも入り込み、料理で使おうと思った時に「うぎゃー!」となったりし、ついに「アリ怖い」「あそこにもアリが入り込んでいるのではないか」という妄想に囚われ始め、キャベツの葉をめくった時にアリの幻覚が見える、大量のアリに襲われる夢を見る、などの、軽くノイローゼのような状態になってしまった。


これは最後の聖域・冷蔵庫を侵食されるのも時間の問題だと思い始め、やはり何とかして徹底殲滅せねば、と思い、色々駆除法を調べて試してみた所、一番効果のあったのは、砂糖とホウ酸に水を加えて混ぜ、ドロドロにしたものを放置しておく、という方法であった。


やはりバカなアリ、毒が混ざっているとも知らず、好物の砂糖と見るやすぐに行列を作りおるのである。

しばらく毒餌に群がっていたアリ共も、しばらくするとパッタリといなくなり、平穏な日々がやってきた。


これで布団で寝ている時、傍にアリを発見して怯えたり、パソコンのキーボードの隙間からアリが出てきて怯えたり、なんてこともない、お菓子だって食い放題、床に砂糖だって撒いても大丈夫、あーなんて平和、平和って素晴らしい…!!






そんなある日、ゴミを出そうとゴミ袋を持ち上げた途端


「うぎゃーーーっ」


そう、ゴミ袋に空いた穴からアリの行列が出来ていたのである…


(結局完全にアリを殲滅できず、引っ越すまでアリとの戦いは続いた)


ヒッチコックの「鳥」ならぬ、「蟻」って恐怖映画を撮ったら絶対ヒットすると思うんだけどなー、このアイデア100万円で譲りますよ。よろしければ、ぜひ。

怪 楽 庵 web

宅録ユニット・怪しからんの運営する、たのしいWebサイトです。

0コメント

  • 1000 / 1000