遠い凪平

小学生の頃、週刊少年ジャンプが流行っていた。


当時はドラゴンボール、スラムダンク、幽遊白書などの人気漫画がひしめいていて、確か歴代最高の発行部数を記録していた頃であり、その流行は僕の住んでいた山奥の田舎にまでしっかり浸透していて、毎週月曜日になると今週のジャンプの話題が飛び交った。


しかし我が家はマンガ雑誌を毎週買ってもらえるような環境にはなく、近所の友達の家へ遊びに行った時に読ませてもらう程度で、話の内容も飛び飛びでよくわからず、周りから置いていかれている感じであった。


当時親との間にどういうやりとりがあったのかは覚えていないが、マンガを読みたがっている子供を見兼ねたのか、週刊誌はだめだが、月刊誌なら買ってもよい、という話になり、そこで「月刊少年ガンガン」という雑誌が選ばれた。


なぜガンガンだったのかはよくわからない。


そのガンガンをはじめて買って読んだ時、巻頭カラーで新連載として始まったのが「アゲインスト凪平」というゴルフのマンガであった。

主人公の凪平という少年は、第一話の一番最初に突然家族全員を交通事故で亡くすのだが、突然現れた富豪の招きに応じて豪邸で暮らすことになり、そこでゴルフの手ほどきを受ける。

己の人生を象徴するような、海からの強い向かい風の中で、ゴルフのショットを練習する凪平少年の姿が印象的であった。

絵も当時の少年マンガに似つかわしくない、濃いめの劇画調で、何かジャンプなどとは違った世界に踏み出したような感じがした。


ちなみに「アゲインスト凪平」は、しばらく経ってまたガンガンを買った時には載っておらず、その後も見かけなかったので、どうなったのか全く知らない。


とにかく、そこから我がガンガンライフ(とそこまで大げさなものではないが)が始まった。


魔界統一トーナメント、セルゲーム、山王戦などで盛り上がるジャンプを尻目に、ひとつ上の兄とガンガンを読み込んでいた。

当時は南国少年パプワくん、魔法陣グルグル、ドラゴンクエスト列伝ロトの紋章などが人気作品であった。

そしてその月刊誌の購買は、のち中・高生で月刊アフタヌーンに変わり、高校途中から洒落っ気に目覚めメンズノンノ→ロッキングオン→サウンド&レコーディングマガジンへと受け継がれていく。

(ちなみに現在は無し)


だから何だ、っちゅう話なんですが、ずいぶん経ってからスラムダンクなどを読み返して、あぁこの作品をリアルタイムで熱狂できていたらまた違った人生になっていたかもしれないな、と少しだけ思う。


子どもの頃の環境というのは特に自身では選択できない所が大きく、しかもその頃の経験がだいぶ人生の基礎になっている。

どメジャーなものに対して少し距離を置こうとしてしまう(といってもその距離はプレステではなくセガサターンを選ぶくらいの程度のもの)様なスタンスというのはそういう所から培われた気がする。


そしてそういう経験をしてきた人が結構多いことも、大人になってから知る。


ガンガン自体は中学生になる頃には卒業をし、マンガも習い始めたギター教室の先生が持っていた「ブラックジャック」や「火の鳥」なんかを読み少し高尚な気分に浸る、という様なこまっしゃくれた、自意識過剰な少年へとなっていく。


まぁそれぞれみんないろんな子ども時代があるよねってことで、終わります。それでは。

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