Final Distance 2020

昨日、M-1グランプリ決勝、久しぶりにちゃんと始まりから終わりまで見た。


ここ数年、家にテレビがなく、リアルタイムで見たいと思いながらなかなか難しかったのだが、今年はそのために漫画喫茶に行った。


で、最初から最後までめちゃくちゃ面白くて、終わってから錚々たるメンバーによる解説配信まであり、素人がごちゃごちゃ語るようなことなどない、と思っていたのだが、ちょっとお笑いとは別の角度から書いてみたいことが出てきた。



全体的にダークというか、毒のある、社会的・倫理的にいけない、とされているようなことをボケに持ってくるネタが多かったように思う。

少し前ならそんな毒のあるネタをやることには躊躇したと思うのだが、今回はそういう所の底が抜けた気がした。

倫理観や品行方正さを求められることに対して「知るかんなもん」というどぎついボケが多く、暴力的な描写も多かった気がして、コロナという未曾有の災禍の中で溜まっている人々の潜在的なストレスを代弁しているように感じた。


思えば前回大会はミルクボーイの史上最高得点など、完成された大会だったような気がする。

それに比べると今回は審査員の評価も割れ、のっけから引退宣言が飛び出したり、なかなか高得点で突き抜けるコンビも出ず最後まで誰が三組に残るかもわからない、といった、かなり混沌とした様相を呈した大会だった。


特に印象的だったのは最終決戦で、マヂカルラブリーとおいでやすこがのネタは同じように、ボケがひたすら暴走し、ツッコミは横で解説するだけ、といった感じで、ツッコミは色々言うのだが、ボケはそれを一切聞かず、そこには透明な壁のようなもの、つまりコミュニケーションの断絶があるような気がした。


対話や身体的接触などを避ける、というコロナ下での意識はお互いの意思疎通を遠ざけ、言葉は届かない。

ツッコミとは常識や倫理観であり、その声が届かず身体的接触(叩く)も図られないとすれば、ボケはどんどん狂気の方へと近付き、収拾がつかなくなる。


マヂカルラブリーは、ネタ中ボケの野田クリスタルがほとんど声を発さず、その動作だけで恐ろしい狂気の列車の状況を表し、村上は突っ込んだり色々言うが、それとは関係なしに展開は進み、二人の間には一切のコミュニケーションが成されない。

普段のネタならば、ボケが行き過ぎた所で村上が止め、また仕切り直しということになるのだが、そんな間断は一切なく、最初から最後までワンシチュエーションで駆け抜けていった。


どちらかといえば漫才というより、パントマイム、志らく師匠の言った通り喜劇に近い感じがしたが、しかしそのコミュニケーション不在の感じが、今の社会状況と重なり合っている気がした。


何だか小難しいことばかり書いてしまいましたが、こんなことお笑いをやっている方々は例え思ったとしても言わない(笑いにならないから)だろうし、見ていてこういう風に感じたのでまとめてみました。


とにかく、全部のネタがおもしろかったし、楽しい三時間半だったのは間違いないです。

マヂカルラブリーさん、優勝おめでとうございましたm(__)m

同じ年にR-1との二冠ってめちゃくちゃすごいよね。

個人的にファンだったので、感無量です。

それでは。

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