全然季節感の違う話であるが、子どもの頃、夏休みに毎年大阪の親戚が十日間ほど泊まりに来ていた。
その親戚には、自分の六つ上のこうちゃんと、その妹で二つ上のみかちゃんという二人がいて、とにかくその二人が夏休みに来るのが楽しみで仕方なかった。
いつも知らないお菓子をいっぱい持ってきていて、それが珍しく、興味津々で、食べてみたいなぁと思いながら見ていた。
今考えると、菓道の蒲焼さん太郎、甘いか太郎、キャベツ太郎などやそれらに類するシリーズのお菓子などが主であり、大人にはそこまで珍しいものではないが、山奥ど田舎の小学生には全て見るのが初めてであり、自分の知らない都会の香りがした。
夜にやるために持ってきていた花火もそれまで見たことのないものばかりでそれも楽しみだったし、音楽なども知らないものをたくさん教えてもらった。
中でも一番印象に残っているのが嘉門達夫の「ハンバーガーショップ」という曲。
最初聴いた時大笑いして、何度も何度も繰り返し聴いた。
その頃はまだ嘉門達夫を知らず、すごくおもしろい歌手がいるもんだと思った。
全てが珍しく魅力的で、もちろん本人たちもとてもおもしろくて大好きだったし、とにかく夏休みの一番のハイライトはその十日間だった。
帰る日が近づくと寂しくて仕方なく、夏休みの終わりと相まって人生の虚しさを感じたものである。
そういえば小学校の高学年の頃、一度だけその親戚の家に行ったことがあった。
その時はなぜか父と二人だけで車で大阪まで行き、僕だけが高槻市の親戚の家に数日泊まらせてもらった。
父は一体何の用事で大阪まで行き、どこに泊まり、何をしていたのか全く不明で、自分もなぜそれについて行くことになったのか何も覚えていない。
その親戚の家でずっと当時出て間もなかったFF6をやりまくり、ついに叔母に呆れられる、といった事態になってしまった。
普段家ではそこまでゲームをさせてもらえず、FFも買ってもらえたことがなかったので、親戚の家にあって、やってもいいとわかった瞬間、もう欲望が止められなくなってしまったのである。
他にも初代プレイステーションをはじめて見て、こんなゲーム機があるのかと驚いた。
昼にはたこ焼き器で作った自家製たこ焼き、テレビには吉本新喜劇、と絵に描いたような大阪の生活で、そういう経験を全くしたことがなかった自分には何もかもが新鮮で、楽しかった。
都会の狭い一戸建ても珍しく、全く住んでいる世界が違うのだと知った。
数日(もしかしたら二泊三日くらいだったかも)泊めてもらい、また父と車で帰ったのであるが、どこかへ連れて行ってもらった記憶もなく、本当にFF6だけやって終わってしまったのだと思う。
こうちゃんもみかちゃんもやがて夏にあまり来なくなり、だんだんと付き合いがなくなっていった。
二人がこちらについてどう思っていたのかもわからないが、とにかく自分にとっては素晴らしく楽しい思い出である。
自分の周りとは全く違った世界に触れることができる夏休みの一時はちょっと非現実的な感じで、全てに慣れてしまった今となっては絶対に体験できない、特別な時間だった。
最近ちょっと懐古的な話が多いなぁと思いつつ、終わります。
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